〜ある日突然〜 朝起きたら、割烹着着用・三角巾装着・銀のおたま装備のチモが居た。 「って、えぇえええええ!!??」 「さっさと起きろ、望美。朝食の準備が出来ている。母であるこのオレが作ったんだ。ありがたく食べろ」 「はぁぁあああ!!??」 これは夢だ。色々と夢だ。だって知盛が割烹着着て三角巾つけておたまなんて持つはずがない。あんだけ剣が大好きな人間がおたま!? はっ、そうか、武器か、武器なんだな!? それで人を殺めるつもりなんだろ! っていうか、母ってなんだ。 「起こしたんだ……すぐにも準備しろよ……?」 憎たらしいほど嫌味な笑顔を残して、知盛は部屋を出て行った。 ………………。 ………寝よう。夢だ。 今度はもっとマシな夢が見られますように。 朝起きて一階に行ったら、スーツ着用・オールバック装備・コーヒー片手に新聞装備の爽やかマサオが居た。ついでに台所にはやはり割烹着のチモがいる。 「って、えぇえええええ!!??」 「遅かったな、望美、父さんもう先に朝食食っちまったぜ。お前も学校だろ? 早く食っちまえよ。母さんに手間かけさせるなよ」 「将臣の言うとおりだぜ……? 俺は気が短いんだ。食べなければ、将臣の弁当にするからな」 「母さんの弁当はマジ美味いから、期待してるぜ」 「はぁあああああ!!??」 夢じゃなかったんかい!! ってか、マサオ爽やかすぎだろが! 誰!? 別人!!?? つーか、さり気にラブラブだよコイツら!! あー…頭痛い……。なんなのコレ。 とりあえず学校行かなきゃ……。 朝起きてチモが居て、マサオが居て、頭痛いながらも学校に行ったら、教壇にスーツ着用・微笑装着・指示棒装備の銀が居た。 「お早うございます、皆さん。今日も元気に頑張りましょう」 「って、えぇえええええ!!??」 「おや、有川神子様は今日も元気でいらっしゃいますね。皆さんも有川神子様を見習ってください」 有川神子様って誰だよ! 敬語健在?え、生徒に敬語健在!? 「では、今日は教科書782Pから始めます」 何事もなく総てを無視して銀は授業を始める。マジすか!! そしてそれから五十分、銀はきっちりと授業を行い、チャイムと同時に爽やかに挨拶をして去って行った。 「嘘だ……ある意味おいしいけど、おいしすぎるから嘘だ……銀が先生だなんて……」 非現実的すぎる。こんなことありえない……夢なら覚めて、マイドリーム!! ……そっか、寝ればいいんだ。そうだよ、寝れば解決するかも! 保健室行こ……頭痛もするし、仮病じゃないもんね。 朝起きてチモが居てマサオが居て学校に銀が居て寝よう休もうと思って保健室に来たら、保健室の椅子に座って不機嫌顔して白衣着用・眼鏡装着・ボールペン装備の泰衡さんがいた。 「何故にーーーーー!!??」 「ふっ、神子殿は相変わらずうるさい娘だな。それだけ叫べればここにいる必要ないだろう。さっさと教室に戻れ」 「いやいやいやいや、私病人なんで。用件聞かずに帰さないでください」 うるさげに私を見た泰衡さんはまるで犬でも追い払うかのようにシッシッと手を振る。アータも十分相変わらずですよ。 「仮病じゃないなら食べすぎで腹痛か? だったら、行くべき場所はここでなくト「頭痛です」 乙女に向かって何言おうとしたこの男は。ネオロマンス! ネオロマンス! 無言でベッドを指した泰衡さんに毒念波を送りつけてやる。 ふんっ、このままベッドで熟睡してやる。起きたら可愛い白龍の頭を撫で回そう。よし、決まり。はぁ、それにしても疲れたなぁ。夢ってこんな疲労感が漂うものだったっけ? 疲れちゃんととらなきゃ……おやすみなさい。 「って、やっぱりかァー!! 今度は惟盛なのかァ!!」 布団で唸っている望美を見ている白龍が傍らに居る弁慶に尋ねた。 「神子、苦しそう……助けてあげたいけれど、わたしにはその力がまだない……弁慶は助けてあげられない?」 「さすがの僕も夢までは……」 弁慶が苦笑して見守る中、望美はひたすらに手を伸ばして歯を食いしばっていた。 目覚めた望美が白龍を見て頬ずりし、様子を見に来た将臣の腰に「将臣くん、あてつけに九郎さんに浮気だなんて早まっちゃダメだよ、幾ら知盛という嫁さんが浮気性だとしても本命は将臣くんなんだからね!! 多分!!」「意味わかんねぇよ!!!!」と飛びついて頭を叩かれるまで離れず、将臣が朔に泣きつく光景が見られたらしい。 了 20070513(再掲載) 七夜月 |