ハッピーバースデー(2008) (この話は将望ではありません。将臣くんの扱いが可哀想です。望美ちゃんが非道です。しかも若干下品です。それでもOKならばスクロールプリーズ★) 「将臣くん、ハッピーバースデー」 「おう、サンキュー。全力で今日を回避したい気分だがな」 望美から押し付けられるようにして手渡された皿の上には異物が乗っていた。将臣が普段から「ガン細胞」だの「劣化した化石」だの「人類の恥」だのと称している望美の料理である。 望美の隣に居た九郎が握りこぶしを作りながら青い顔をしていった。 「や、やったな将臣!」 「OK、わかった。九郎、お前今日から裏切り者な」 譲の姿が見えないということは、きっと毒見をさせられたに違いない。さしずめ九郎は倒れた譲のせめてもの代わりに将臣の行く末を見守るため、一緒にいるんだろう。ということは、コレは相当なシロモノなのだ。 「誕生日って、確か祝ってくれるもんだよな?」 確認のために望美に聞くと、「え?超お祝いしてるよ?」と返された。めっちゃ笑顔で。絶対嘘だ。 「18歳(仮)か……オレの人生短かったな」 「うわー、何そのわたしの料理食べたら死ぬ前提の感想。将臣くん剣持ってちょっと外でなよ」 望美の笑顔が更に深くなって、九郎はそれを必死に止めた。 「待て望美、今日は将臣の…えーっと、短小日?なんだろう。手荒なまねをするな、可哀想だ」 「九郎待て、それ違う」 大いなる誤解だ、と思いたい。自慢ではないが少なくとも譲よりは……って、違う違う。 「望美がそう言っていたが違うのか?」 「やだな、九郎さんそれ勘違いですよ〜」 「つか、お前もっと恥じらい持てよ。つつしみって言葉知ってるか?」 呆れた将臣の言葉にも望美は自信満々に答える。 「当然知ってるよ、やだなあ。わたしの辞書は敦盛さんへの愛を慎みまくってMAJIで押し倒す5秒前★なんだから」 「よくわかった、お前の頭の中は変態という文字で埋め尽くされてるのがよくわかった」 将臣は誕生日なのに痛み始めた頭を軽く押さえながら、目の前の料理を忌々しげに見つめた。 「将臣、別に短くたって恥じることはないと思うぞ。まあ…なんだ、男は心意気だ」 九郎は将臣の肩をポンッと叩いた。 「九郎お前はお前で何の話をしてるんだ?いい加減そこから離れろ」 そんな全身で憐れみを発するのはやめて欲しい。将臣からすればそれは甚だしく迷惑な勘違いに違いない。 「さ、将臣くん!レッツイーティン!(eating)」 「まずお前が食えよ」 「それはわたしに死ねってこと!? 将臣くんひどくない!?」 「お前はそんな死ぬようなものを俺にプレゼントしたのか!?」 「一生の記念だよ」 「一生涯の終焉だぞ!?」 「細かいこと気にしちゃいけないよ、男の子でしょ?」 性別は関係ないだろ人生かかってんだ。将臣は通じないと解っていてその言葉を飲み込んだ。 「気持ちだけ貰っとく」 「酷い!わたしが丹精込めて作ったのに!」 「そうだぞ将臣」 「じゃあお前が食え、九郎」 「頑張れ将臣!」 ジト目でそういえば視線を逸らしながら九郎はすでに逃走体勢を整えている。裏切り者は本格的に裏切り者のようだ。 将臣は八葉、そして青龍同士の絆の脆さを知った。 「じゃ、覚悟決めて食べようか★」 「語尾の★はなんだ!しかも覚悟!?」 将臣の突っ込みは望美の怪力バカ力でこじ開けられた口に放り込まれた望美手製の劇物…もとい手料理によって、意識の奥底に沈んでいった。当然、覚悟を決める間もなく、将臣の命は風前の灯火に晒され、九郎に呼ばれた弁慶が譲の看病から駆けつけるまで生死の境を彷徨っていたのは後々みな知ることとなる。 了 20080815(再掲載:20080906) 七夜月 |