【楽屋裏其の八】



舞台裏。


スタッフ
「お疲れ様です、リズヴァーンさん。OKです、休憩入ってください」
リズ先生
「うむ」
望美
「お帰りなさい、先生。撮りはもう終ったんですね〜、どうでした?」
リズ先生
「うむ、演技というものはなかなか難しいな」
望美
「まったまたぁ、先生のその白衣、すっごく似合ってますよ! ちょっとドキドキしちゃった」
リズ先生
「そうか、神子が喜んだのならば良かった」
男子一同
「(なにぃいいいいい!)」

「せ、せせせせせ先輩! 先輩はもしかして……!」
景時
「まさか、望美ちゃん君は……!」
ヒノエ
「姫君は随分年上好みなんだね」
弁慶
「だったら、まだ僕にも脈があるかな。君よりも年上ですからね」
望美
「何を言ってるの、みんな」
白龍
「神子はリズヴァーンが好き?」
望美
「うん、好きだよ。だってね、こうすると」←リズヴァーンの腰に抱きつく
男子一同
「〇※♪■*△#!?」
望美
「お父さんみたいなんだよ〜」
リズヴァーン
「はは、神子離しなさい」
将臣
「おい、今リズ先生、ははって笑わなかったか?」
リズ先生
「気のせいだ」
敦盛
「しかし神子、お父さんというのはいささか、その……先生はまだお若いように思えるが」
九郎
「思えるではなく、実際にまだお若いぞ、敦盛」
望美
「えーでも、お父さんだよ。ちょっとマッチョな」
将臣
「マッチョかよ。つーか、おまえんちのおじさんはまだもうちょいフツーな感じじゃねぇか?」
望美
「解ってないなぁ。この先生から漂う雰囲気がそもそも”パパ”って感じじゃない。考えたこと無い?」

「無いですよ。そんな恐れ多い……」
九郎
「そうだぞ、先生を父上だなんて、お前!」

「大体、先生がお父さんってことは、そのうち先生も団塊の世代を迎えて定年退職して家庭菜園というささやかな趣味を持ちながら老後の生活を送るんですよ。先輩はそんなの想像できますか?」
望美
「んー……それもアリかな! なんかすっごく"っぽい"し!」
将臣
「何が"っぽい"んだよ」
望美
「知ってる、将臣くん? 女性は海馬が発達してて記憶力がとてもいいんだよ」
将臣
「はぁ、それで?」
望美
「そうするとね、論理的に話すよりも自分の経験から物事を判断することが多いから、勘が鋭いんだ。つまり、女の勘をバカにすると、後で痛い目を見るってこと。覚えておいた方がいいよ」(絶対零度の微笑み)
将臣
「(こえええーーー!! チモモリ様降臨だよ!)」
弁慶
「それじゃあ、望美さん。さしずめ僕は君のお兄さんでどうですか?」
望美
「そうですね、将臣君はおにいちゃんっていうか、兄貴って感じだし。譲くんは弟のようなお母さんだし、朔はお姉さんみたいだし、うわーい。いっぱい家族がいるね」

「(弟のようなお母さんってなんだ!? どっちにしろ俺に脈なんかないんじゃ……!)」
ヒノエ
「それじゃ、姫君。オレは姫君の恋人役でどうかな?」
望美
「あっは、ごめんね、それはもう決まってるから。ヒノエくんは近所の悪ガキでいいよ。スカートめくりとかしてくる」
ヒノエ
「(悪ガキ……)それは残念、で、その幸運な役柄を手にした奴は一体誰だい?」
望美
「ポンタさん! 他にいるの?」
男子一同
「(人間という手は無いのか?)」
敦盛
「なんとなく想像はついていたが……彼か。神子は本当に彼が大好きなのだな」←ちょっと落ち込み
望美
「だってあの渋さ! たまりませんよ〜! まさにハードボイルド! グラサンかけて黒スーツ着て、拳銃持ってたらもう最高!そんでバックが夕日でBGMは『太陽に吠えろ』とかさ!」

「先輩、歳幾つですか?」
将臣
「譲、認めたくない気持ちは解るがこいつは俺と元は同じ歳だ」
望美
「ハッ、こうしてはいられないわ。あと少しでお姉さんと一緒が始まっちゃう!それじゃあ、みんな!お先にねー!!」
敦盛
「神子、私は貴方の役にも入れてはもらえないのか……」
リズ先生
「敦盛、気にすることは無い。神子はお前に重要な役割を与えた。神子にとってお前は空気なのだ。空気がなければ人間は死んでしまう、つまり、お前はそこにただ在るというだけで、価値があるのだ」
敦盛
「先生……! ありがとうございます」

 でもそれって、逆に言えば空気並みに存在感がないってことなんじゃ……とは、敦盛を不憫に思った人間誰もが口に出すことは無かった。


 【楽屋裏其の八】 了 



    20060904  七夜月


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