魅せられて 気付けばいつも、姫君を目で追ってる俺。 不思議だぜ、女の子とは広く浅くの付き合いだったこの俺が、たった一人にここまで熱を上げてるなんて。 だけどさ、惚れちまったもんはしょうがない。 「ヒノエくん、聞いてる?」 その上目遣いな目も、濡れた唇も、すべて俺のものにしたい。 今すぐにも行動を起こさない俺を、褒めてほしいくらいだね。 「ヒノエくんってば!」 「もちろん聞いてる。俺がお前の言葉を一言一句逃すはず無いだろ?」 「それじゃあ、私がなんて言ってたか言ってみて」 聞いていなかったと自信がありそうな姫君の挑発。 そんなお前も可愛いけれど。 たまには怒ったお前も見てみたい、なんてね。 「この二つの反物、どちらの色が綺麗かって話だろ?」 なんなく答えて見れば、途端に悔しそうに唇を結ぶ。 やれやれ、やっぱり怒らせたかな。 強気な瞳も魅力的だけど、姫君に嫌われるのは勘弁だ。 「それじゃ、答えて。どっちの色がいいと思う?」 「どちらもお前によく似合う。両方って答えじゃダメかい?」 「ダメ!それに、私が着るわけじゃないんだよ? これ、ヒノエくんの結納の衣服をつくるためのものなんだから」 「大差無いさ」 「大有りだよ!もう!少しは真面目に考えて!」 そこまで言ってくれるのは、俺との婚儀をよほど大切にしてくれているから、ってことかな。 不謹慎だけど、それはすごく嬉しいことだ。 ただ、解ってないね、姫君は。いつでも俺が本気だってこと。 「いいや、やっぱり大差ないよ。どの道これはお前が着ることになるんだから」 「え?」 「夜着すら纏わないお前の肌に、この着物が咲き誇る……ってね」 「ヒ、ヒノエくんっ!!」 純情な姫君にも俺の言わんとすることがちゃんと伝わったようだ。 「照れてる姿も可愛いよ」 「ホントに真面目にやってよ……」 くすくす笑い声を上げると、姫君が脱力したように肩を落とした。 「俺はいつでも真面目だぜ? その反物だってどちらが綺麗かと言われたら、俺は迷わずお前を選ぶ」 「……私、選択肢には入って無いんだけど?」 怪訝そうな顔でこちらを見つめる姿に、少しだけ悪戯心をくすぐられる。 俺の気持ちをわかるのは、まだまだ当分先みたいだ。 「いいや、お前より綺麗なものなんて、この世には無いね。本当は今すぐにでもお前の全てを俺のものにしてしまいたいくらいなんだから。だけど、俺を色香で惑わすお前になる前の、純潔なみんなの姫君様をもう少しだけ味わっておくのもいいだろうと思ってさ。そんな奴を俺が独り占めしてるってのも、気分良いしね」 髪を一房掬って、口付けを落とす。ほんのりと漂う姫君の香りは、本当に良い香りだ。 「ヒノエくん……」 さっと頬を染めたお前は、最高にそそるんだけどね。 手を伸ばして肩に触れる、けどやっぱり言った手前は我慢しないと。 約束を反古するのは俺の流儀には反するってもんだぜ。 「とりあえず今は、これで我慢してやるよ」 驚いて顔を上げた姫君の顎を掴んで、唇を掠め取る。そしてそのやわらかい唇を人差し指で丁寧になぞった。 こういった反応はいつまで経っても新鮮で全然飽きない。 「覚悟しておきな、本番はこんなもんじゃ済まさない。最高の気分を味あわせてやるよ」 「ヒ、ヒ、ヒノエくんっっ!!」 「あはははっ」 真っ赤になったお前は、まるで甘い蜜が入ったりんごみたいだ。かじってみたらやっぱり甘いのかな? 時期尚早、それともまだまだ未熟なのかも。それを確かめるのもまた、すごく興味があるけどね。 どちらにせよ、お前が俺を選ぶ前から、俺はお前を選んでいて、俺をここまで骨抜きにしたんだ。熊野別当をこんな風にするなんて、この責任はお前自身で取って貰うぜ? 可愛いお前の声を早くきかせてくれよ。 これから先も、俺だけのために……ね。 了 いや、ヒノエ偽者ですまそ(平伏) 人間はふっきれると脳内がピンク色に変色しますね。 未だにヒノエって言うのがつかめてないので、ちょっと視点とか微妙ですね。 そしてヒノエは思ってる事が支離滅裂(笑)それは作者の技量不足デス。 すみません。 自己満足作品万歳! 20050922 七夜月 |